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福岡高等裁判所 平成7年(ラ)185号 決定

抗告人(債権者)

増井三喜子

右代理人弁護士

梶原恒夫

深堀寿美

井上道夫

登野城安俊

小宮学

西村尚志

相手方(債務者)

医療法人和光会

右代表者理事長

林田安之輔

右代理人弁護士

春山九州男

吉田純一

主文

一  原決定を取り消す。

二  相手方が平成七年六月六日抗告人に対してした、同月一六日から医療法人和光会今宿病院での勤務を命ずる旨の意思表示の効力は、仮に停止する。

三  手続費用は、原審、当審とも相手方の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  抗告人

主文と同旨

二  相手方

1  本件即時抗告を棄却する。

2  抗告費用は抗告人の負担とする。

第二  事案の概要

本件は、相手方の経営する病院に准看護婦として勤務する抗告人が、相手方から、主文第二項記載の配転を命ぜられた(以下「本件配転命令」という。)ところ、右命令が無効である旨主張して、その効力の仮の停止を求めた事案である。

一  本件の基本的経緯

以下の事実は、当事者間に争いがないか、括弧内に示した疎明資料により容易に疎明される。

1  相手方は、一本松病院(福岡県田川市所在)、見立病院(同市所在)及び今宿病院(福岡市西区所在)の各病院のほか、老人保健施設であるあけぼの荘(田川市所在)等を経営する医療法人であり、八〇〇名近くの従業員を擁している。なお、相手方は、当初、今宿病院を経営していなかったが、昭和六二年に同病院を買収した(乙一〇)。

2  抗告人は、田川市松原に居住していたが、昭和五四年三月に准看護婦の免許を取得し(乙八)、昭和五五年八月二五日に相手方に採用され、以来、一本松病院に勤務している(その後、肩書住所地に転居)。なお、同病院における看護婦及び准看護婦の勤務形態は日勤、準夜勤及び深夜勤の三交代制である。

3  平成二年四月七日、一本松病院及び見立病院に勤務する労働者は、福岡県医療福祉労組和光会支部(以下「和光会支部」という。)を結成し、抗告人もこれに加入し、加入時から平成五年一〇月まで右支部の執行委員であった(甲二)。和光会支部は、相手方との間で団体交渉を行うなど組合活動をしていたが、平成三年八月三一日、見立病院において福岡県医療福祉労組見立支部が結成される一方、平成六年九月一四日には、相手方に勤務する労働者によって、連合加盟の和光会病院労働組合(以下「和光会労組」という。)が結成された。

4  相手方は、平成六年末から就業規則の改正作業に着手し、過半数組合である和光会労組との間で交渉を重ねてその同意を得た上、平成七年六月一日付けで就業規則を一部改正し、それまでは明記していなかった職員の配転に関する条項を設け、その第八条において、「業務上必要があるときは職員に、配置換え、職務の変更、転勤、出向等を命じ、役職の任免を行なう。(1)職員に転勤または出向を命じる場合には、本人の健康及び家庭の状況を考慮して適材適所、公平に行なう。(2)職員は正当な理由のない限りこれを拒む事はできない。(3)異動を命じられた職員は、指定期日までに業務引き継ぎを完了しなければならない。」と明記するに至った。そして、相手方は、同日、田川労働基準監督署に所定の届出をなすとともに、同月二日に改正就業規則を全職員に配布した。なお、相手方は、和光会支部とは右就業規則の改正につき協議をしなかった(甲四、五、七、乙二、一〇)。

5  相手方は、平成七年六月六日、抗告人に対し、一本松病院副院長林田隆晴を通じて、同月一六日から今宿病院での勤務を命ずる旨の本件配転命令を発令した。なお、同病院における看護婦及び准看護婦の勤務形態は、日勤及び夜勤の二交代制である。

6  抗告人は、同月八日、福岡地方裁判所田川支部に本件配転命令の効力の仮の停止を求める仮処分申立てをした。相手方は、抗告人の申入れに従い、右申立てに対する決定がなされるまでの間、同人を今宿病院に勤務させることをとりあえず留保し、自宅待機を命じた。

二  争点

本件における争点は、①相手方は、抗告人の同意なしに本件配転を命じることができるか(抗告人と相手方の間において、抗告人の勤務場所を一本松病院に限定し、又は、少なくとも田川市所在の施設に限定する旨の合意が成立していたか及び抗告人の勤務形態について三交代制に限る旨の合意が成立していたか。)、②本件配転命令が権利濫用又は信義則違反となるか、③本件配転命令が不当労働行為となるか、である。

第三  当裁判所の判断

一  争点①(相手方は、抗告人の同意なしに本件配転を命じることができるか。)について

1  抗告人は、相手方に雇用された際、労働契約の内容として、抗告人の就業場所を一本松病院に限定し、あるいは、少なくとも、相手方の経営する田川市所在の施設に限定する旨の合意が成立したと主張し、その根拠として、相手方の看護婦の採用面接は勤務予定病院ごとに行われているところ、抗告人の採用面接は一本松病院で行われていること、相手方による看護婦の募集広告が病院単位でなされていること、一般に、看護婦及び准看護婦は、その職務の特質上、勤務場所がその居住地域の病院に限られていること、抗告人の資格は准看護婦であり、将来、幹部となることが予定されていない、いわゆる平の現業労働者であること等を挙げる。

しかし、抗告人と相手方との労働契約書(乙九の一)には、労働の場所等につき、特に限定する旨の記載はない上、右のような採用面接の場所や募集広告の方式は、各病院ごとの欠員の状況に応じて臨機応変に募集し、採用後、当面の勤務場所を当該病院とする趣旨にとどまるものであって、このことをもって、採用後、当該労働者の同意がない限り、相手方の経営する他の施設へ絶対に異動させないとの趣旨を含むものとみることはできないし、看護婦及び准看護婦の職務上の特質や抗告人が准看護婦であることをもって、直ちに、労働契約上、抗告人の勤務場所が一本松病院に限られていたと認めるのは困難である。

むしろ、前記のとおり、相手方は、抗告人を採用した当時であっても、一本松病院、見立病院、あけぼの荘等複数の施設を経営し、多数の従業員を擁していたのであって、このことからすれば、相手方においては、これら施設間における従業員の異動は当然に予定されているものというべきであって、現に、乙二二によれば、相手方の経営する全施設相互間の異動は、昭和六〇年以降平成七年まででも合計一一三名を数えており、その中には、准看護婦も含まれていることが疎明されるのである。

したがって、抗告人と相手方との間において、勤務場所を一本松病院に限るとの明示又は黙示の合意が成立したことの疎明はないものといわざるを得ない。

また、乙四、一六によれば、相手方が今宿病院を経営するようになった平成元年から平成七年までに限ってみても、今宿病院と他の施設(いずれも田川市所在)との間で、合計二〇名が異動しており、その中には、准看護婦も含まれていることが疎明され、このことと右に説示した点に照らすと、抗告人と相手方との間において、勤務場所を田川市内の施設に限るとの合意が成立したことの疎明もないというべきである。

2  抗告人は、一本松病院は三交代制であり、抗告人は、このような三交代制により勤務する旨の合意をしたところ、これと異なる二交代制の今宿病院への勤務を命ずる本件配転命令は、右の合意に違反するとも主張する。しかし、前記の労働契約書において、勤務形態を三交代制に限るとの条項は記載されていない上、勤務形態については、業務の必要性に応じて当然改変されることもあり得る上、相手方のように複数の施設を経営する法人の場合には、施設間の異動により、異なる勤務形態の下で労務を提供すべきことは、当然に予定されているものというべきである。したがって、抗告人と相手方との間において、勤務を三交代制に限る旨の合意が成立していたとの疎明もないものというべきである。

3  以上によれば、抗告人と相手方との間の労働契約においては、勤務場所は、一本松病院に限定するものではなく、相手方の経営する他の施設を含むものであること、異動に伴う勤務形態の変更があることが少なくとも黙示的に合意されていたものと認めるのが相当であるから、相手方において、抗告人の勤務場所を今宿病院と定め、これに転勤を命じて労務の提供を求めることは、右合意の範囲内であって、抗告人の個別具体的な同意がなくても、抗告人に対し本件配転を命ずることができるものというべきである。本件配転命令が労働契約に違反している旨の抗告人の主張は採用できない。

二  争点②(本件配転命令が権利濫用又は信義則違反となるか。)について

1  転勤は、一般に労働者の生活関係に少なからぬ影響を与え、労働者に不利益を及ぼし得る性質のものであることにかんがみ、当該配転命令につき業務上の必要性を欠くとか、労働者に対し、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を与えるような場合には、当該配転命令は、権利濫用ないし信義則違反として無効となるものと解すべきである。

そこで、以下、本件配転命令が権利濫用又は信義則違反になるか否かについて判断することとする。

2  配転における業務上の必要性とは、当該勤務先への異動が余人をもっては容易に替え難いといった、高度の必要性を要するものと解するのは相当でなく、労働力の適正配置、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の向上、業務運営の円滑化等の経営の合理的運営に寄与する点が認められる限りは、業務上の必要性を肯定すべきである。

そこで本件についてこれをみるに、疎明資料(乙六、一〇、一一、一二の一、二、乙一三、一四、一八)によれば、以下の事実が疎明される。

(一) 我が国においては、高齢化が急速に進行しつつあり、医療費負担も大幅に増大して、医療保険財政を圧迫している。この問題を解消するため、医療保険財政改革の一環として、慢性患者は老人保健施設や長期療養型病床群に移動させるとともに、右慢性患者を収容する施設について点数制を廃止し、定額医療制を導入することによって、乱診、乱療による医療費の増大の抑制を図るという施策の実施も検討されている。しかるに、相手方の経営する一本松病院及び見立病院は、いずれも長期入院患者の多い精神科及び老人病を専門としており、今宿病院も老人病患者が主体なので、仮に、右のような方向での制度改革が実現すれば、このような長期療養型病院が中心の相手方の経営は、危殆に瀕することとなる。

(二) 相手方は、このような状況の中での生き残りを図るため、平成五年から、各病院、各施設を単体の事業体としてみるのではなく、全病院、全施設を一体とした、医療と福祉を統合した総合的医療法人へ変革することを目的として、徹底したリストラと職場の活性化、職員の意識改革を伴う大規模な病院改革を計画し、実施しつつある。

(三) 一本松病院は、入院患者が常時五五〇名を数え、田川市では有数の病院であって、看護婦の技術力は高い反面、競争にさらされることがないため、その勤務意欲はマンネリ化しており、患者への接遇、サービスに徹した体制づくりが遅れている。他方、今宿病院は、半径五キロメートル以内に同種病院が約二〇もあって、過当競争にさらされており、患者への接遇、サービスが非常に良く、MRSA感染等の防止対策等も進んでいる反面、一本松病院や見立病院に比べ、看護婦・准看護婦の平均年齢が若く、技術力も高いとはいえない。このことから、相手方においては、右の病院改革の一環として、一本松・見立両病院と今宿病院相互間において、看護婦・准看護婦を含む職員の活発な人事異動を行い、前者の高い技術を後者に伝えるとともに、後者において、患者への接遇やサービス体制を学んで、前者に持ち帰り、伝えてゆく必要があると認識している。

(四) このような事情から、相手方においては、一本松・見立病院と今宿病院間の異動を含め、施設間の人事交流を広く実施することとし、平成六年から、全職員に対し、この人事交流計画の目的と概要を繰り返し説明した上、平成七年三月の定期異動から、本格的な異動の実施を開始した。本件配転命令も、その一環としてなされた定期異動の一部であり、抗告人を含め二六名の職員が、その対象となっている。

(五) そして、一本松病院においては、看護婦が特一の基準数ぎりぎりしかいないため、同病院から今宿病院へ配転する場合には、准看護婦の中から選定せざるを得なかったところ、准看護婦の中では、抗告人は、昭和五五年以来、約一五年にわたって一本松病院に勤務し、経験豊富で、技術的にも優れ、業績を上げているところから、今宿病院との交流要員としてふさわしい。

右の諸事情にかんがみると、抗告人に対する本件配転命令は、業務の能率増進、労働者の能力開発、勤務意欲の向上、業務運営の円滑化等の相手方の経営の合理的運営に寄与するものというべきであり、本件配転命令は、業務上の必要性を有するものということができる。

3  次に、本件配転命令が抗告人に与える不利益について検討するに、抗告人は、本件配転命令によって抗告人が現住所からの通勤が不可能となり、夫婦の別居も避けられなくなる等と主張して、その生活上、経済上被る不利益が極めて大きいと主張する。

疎明資料(甲二、一二、乙一〇)によれば、相手方においては、前記のような配転の目的に即し、本件配転命令後の抗告人の今宿病院での勤務は最大二年を予定し、その後は田川市内の施設に復帰させることにしていること、今宿病院は、日勤(午前八時三〇分から午後五時まで)と夜勤(午後四時から翌日午前九時まで)の二交替制であり、抗告人の勤務については、当分の間(約三か月)は日勤が予定され、夜勤及び日曜出勤は不要とされたこと、夜勤の場合、夜勤明けの当日とその翌日も休みになること、抗告人の今宿病院への通勤については、相手方の自動車による送迎がなされ、これを利用した場合の実際の通勤時間は片道一時間三〇分ないし二時間程度であって、夜勤の場合も送迎の自動車を利用できること、抗告人は、現在、夫と二人暮らしであり、長女は既に独立して福岡市内に居住していること、なお、抗告人は、一本松病院へは自家用車で通勤しており、その所要時間は片道二〇分であることが疎明される。

そうすると、抗告人が、本件配転により、現住所からの通勤が不可能となり、夫婦の別居も避けられなくなるとは考えられない。確かに、本件配転により、一本松病院への通勤に比べ、相当の遠距離通勤を余儀なくされることになるが、右の程度の生活上の不利益は、一般的には、従業員が、転勤に伴い、通常甘受すべきものというべきであって、これのみをもって、生活上の著しい不利益であるとまではいえない(なお、甲一二によれば、抗告人は、本件配転により、夜勤手当が約三万円、残業手当が約一万円支給されず、収入が四万円近く減少したことが疎明されるが、このことは、相手方の配慮により、当面、日勤で勤務していたことの必然的な結果にすぎず、このことから、抗告人が本件配転命令により経済的に著しい不利益を被るものということはできない。)。

しかしながら、疎明資料(甲一二、一五、一八ないし二〇、乙二〇、二一、二五、当審における抗告人に対する審尋の結果)を総合すれば、以下の各事実が疎明される。

(一) 平成七年九月二〇日、抗告人の本件仮処分の申立てを却下する原決定がなされたが、抗告人は、以前から腰痛があり、車酔いをする質でもあり、長距離の自動車通勤をする自信がなかったことなどから、本件配転命令に従うか退職するか悩んだ末、原決定を厳粛に受け止めて努力してみようと考え、同年一〇月二日から今宿病院への通勤を開始した。

(二) 勤務(日勤)日の生活状況は、以下のとおりである。すなわち、抗告人は、午前四時に起床し、朝食を準備し、抗告人と夫の弁当を作り、洗濯をした上、部屋の掃除をする。五時三〇分ころから夫と朝食を摂り、六時一五分ころ自宅を出て、自家用車で赤池町にある今宿病院の中原看護部次長宅まで行き、そこから、六時二五分ないし三〇分ころ今宿病院のライトバンに同次長ほか二名の者と同乗して出発し、同病院には七時五〇分ないし八時ころ到着する。八時三〇分から午後五時までの日勤を終えた後、病院からの帰路は約二時間かかり、通常、七時ころ帰宅する。帰宅後、夕食の準備をして、九時ころから夕食を摂り、後片付けをして、一〇時ころ就寝する。

(三) 抗告人は、車に弱いので、通勤のライトバンの中ではビニール袋を用意していたが、気分が悪くなって、嘔吐したこともあった。

(四) 抗告人は、遠距離自動車通勤の負担等で腰痛が悪化し、同年一〇月五日佐々木整形外科病院で投薬を受け、ホットパック、牽引等の治療を受けたが、その後も症状が続き、同病院での治療を継続している。抗告人は、腰痛を我慢して通勤を続けていたところ、同年一〇月中旬ころから、不眠症状が現われ、頭が重く、船酔いのような眩暈やふらつきがあり、また、胸に鉛が入っているような圧迫感を覚えるようになった。そこで、同年一一月一四日、飯塚病院心療内科の医師の診察を受けたところ、自律神経失調症(心身症)であり、症状強度のため、今後三か月間の通院加療を要すると診断され、医師の指示により精神安定剤を服用している。

(五) 抗告人は、右の症状及び腰痛の悪化により、欠勤しがちとなり、出勤日数は、同年一〇月が一〇日、一一月が七日、一二月が九日(ただし、同月二六日まで)であった。

(六) 抗告人は、同年一二月二六日に、医師から、自律神経失調症がますます悪化しているとのことで、一か月間の自宅療養を指示され、相手方に届け出た上、平成八年一月以降全面的に病欠するに至り、現在は、飯塚病院に二週間に一度の割合で通院しながら自宅療養を続けている。

右のような、原決定後病欠に至るまでの経緯にかんがみると、抗告人は、原決定後、とりあえず、本件配転命令に従って今宿病院への通勤を開始したものの、早朝四時の起床や片道一時間三〇分ないし二時間を要する慣れない遠距離自動車通勤による負担から腰痛が悪化し、さらに身体的、精神的無理が重なって、自律神経失調症に罹患したものと推認される。右自律神経失調症は、抗告人固有の身体的、精神的要因に基づくものと考えられ、心因的影響も否定できないけれども、抗告人としては、原決定を厳粛に受け止め、とりあえず今宿病院へ通勤するよう真摯に努力したことがうかがわれるのであって、右疾患をもって、単に、抗告人個人の甘えであるとか、気持ちの持ちようの問題にすぎないなどと、一概に決め付けることもできないものというべきである。

そうすると、本件配転命令に伴う遠距離通勤等により不利益は、一般的には、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものとはいえないけれども、抗告人にとっては、本件配転命令は、発令当時の抗告人の身体的、精神的条件に照らし、健康被害を招来し、ひいては欠勤を余儀なくさせるものであったというべきであるから、抗告人に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであると認められる(なお、相手方の就業規則第八条には、職員に転勤を命じる場合には、本人の健康を考慮して行う旨規定されていることは前記認定のとおりである。)。したがって、本件配転命令は、権利の濫用に当たり、無効であるといわざるを得ない。

三  保全の必要性について

抗告人としては、本件配転命令の効力に関する本案判決の確定を待っていては、相手方を退職せざるを得なくなる等、著しい損害を被るに至ることは明らかである。したがって、右損害を避けるため、現時点において、右命令の効力を仮に停止する必要のあることが疎明される。

四  結論

以上のとおりであって、抗告人の申立てを却下した原決定は、失当であるから、これを取り消し、本件配転命令の効力を仮に停止することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官高升五十雄 裁判官古賀寛 裁判官原啓一郎)

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